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◆ 経営情報フォーラム

経営と複雑系



著者: 

価格(税込)¥550
サイズA4
ページ数26 ページ
発行年月1998年 12月
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商品の説明

この小特集では、我々は人間や組織のような主体を含むシステムに対する複雑系の扱いと、それが経営科学にどのような関係を持つかを扱う。複雑性(Complexity)に対する研究は、半世紀以上システム科学にとって重要なテーマであったし、経営科学にとってもそれは同様であった。だが複雑性の何をどう研究するかは、対象とする領域やアプローチにより表面上大きな違いがある。経営学では、システムが環境複雑性へ如何に対処するかが一つの興味の対象であった。これは環境の多様性をシステムが取り入れる必要があるというアシュビーの最小多様度の原理やそれを組織に適用したコンティンジェンシー理論などが有名である。また組織やその活動の中で様カに現れる階層性も複雑性に関する重要なテーマであったし、システムの構造変動や、目的を持つシステムをどのように特徴付けるかも大きな課題であった。J・G・マーチ&H・A・サイモンの『オーガニゼージョンズ』は組織目標を、定型化された作業手続きに結び付けて論じるという意味で「目的を持っシステムとしての組織」の扱いに関する一つの方向性を切り開いた。これら組織の複雑性に関する理論は現在、新しい発展の時期を向かえつつある。他方で、情報コミュニケーション革命下で生じつつある組織や社会経済システムの新しい現実は、主体を含む複雑系に関する新しい認識とシステムのデザイン論を必要としている。主体を含む複雑系への新しいアプローチは、今日、自律的エージェント集団の理論を構築しようとする方向に向かっている。そこでは、何らかの自律性を持ち、他のエージェントの状態や自身の内部モデルなど様々なレベルの情報を参照しながら活動するエージェントからなるシステムの研究が重要なテーマとなる。さらに、複雑系の名のもとで、非線形力学系の軌道を定めている時間発展作用素の性質をシステムの分岐という大域的性質に関して論ずるアプローチも多く見受けられる。カタストロフイ理論、散逸構造、シナジェティクス、カオスなどの理論は、いずれも力学系の解の大域的な分析に基づいて、微分方程式で定められる動的システムの複雑性を扱っている。これら状態空間上の時間発展作用素によってシステムが特徴付けられる理論は、複雑性に対する重要な貢献を行っている。だがそれは経営学や経済学にとって、新しい現実に対処するための主要な分析道具となるのだろうか。もう一つ、複雑系として喧伝されているのが、サンタフェ研究所の複雑適応系のパラダイムである。これは日本の経済・経営領域では、B.アーサの収穫逓増の議論、カウフマンネットワーク、セルオートマタ、遺伝アルゴリズムと人工生命など部分的に紹介され有名となった。だが国内の工学系の領域でサンタフェ研究所などと軌を一にして階層システム論、自律分散システム論や創発性科学などの複雑系研究が発展してきた流れについては殆ど紹介されることはない。今日、複雑系というときこれら、自己組織化や樗造変動についての分析、カオスなどの非線形動学、人工生命や自律的工一ジェントからなる複雑系の分析といったアプローチと、そこで用いられる技法が取り混ぜこぜになったまま論じられている。それが複雑系というフロンティア領域を分かりにくいものにしているのであるが、きちんと読み解けば、これらの流れは、領域や手法を異にしながらも根底めところではつながっていることがわかる。その流れとその向かうべき方向、そしてそれが鮭営学あような人間科学にとって持つ意味について、異なった幾つかの方向があり得る。それらの中で経営学にとって重要な、主体を含む複雑系にとって探尭すべき流れとはなにかを我々は知りたく、本特集の中では、この複雑系に関する知のありようについて、これを分かりやすく整理していきたい。その上で今後の社会科学にとって重要な、主体を含む複雑系に対するエージェント指向のアプローチについて、これを概説していこうと思う。特集では、筆者を含め五名の著者により、経営システムに関連した複雑系に対する研究が基礎的なものから応用的なものまで解説されている。これらは、いずれも一つの共通項、「エージェント指向アプローチ」という視点を持つ。この主体を含む複雑系に対する工一ジェント指向アプローチについて、筆者等は1993年末から、ポリエージェントシステム(多主体複雑系)という名前のリサーチイニシアチブによって学際的研究を行ってきた。そこでは自己組織化や学習、進化などというシステム的性質と並んで、エージェントが内部に自らが構成した参照モデル(内部モデル)を持つことや、エージェント間の相互参照に基づいた活動、更にエージェントの複合化、高次化などのシステム的性質が着目されている。このリサーチイニシアチブに基づいた研究が、既に各々の専門領域の中で展開されている。本特集は、経営に関した様々な領域で、これら複雑系へのエージェント指向のアプローチがいかに行われているかを紹介することを目的とするものである。社会科学の領域では今でも、南瓜や西瓜や胡瓜の如く、米論、政論がもてはやされる風潮がある。残念ながら日本のメディアは、米国経由の複雑性の議論を多く取り上げるが、国内でのシステム科学や、創発性科学、複雑性工学などの独自の動きに関する問題関心は比較的鈍い。遺伝アルゴリズムの言葉を使い、研究上のアプローチを染色体と表現したとすると、これに対して進化を促進させる適切な評価のランドスケープそのものの自己形成が日本という場では未成熟であると言うことになる。これではなかなか新しい研究が進化することは難しい。一昨今、日本でも学際的交流が様々な領域で盛んに行われるようになってきている。人間を含む複雑系の科学は、長い期間を経て醸成されてきた様々な問題意識がようやく結節し、自律的なエージェント集団に関する科学としての展開期を迎えようとしている。今日、この領域については、世界的に様々な取組が行われ始めている。今後は国の内外を問わず、幅広い分野での学際的協力と研究が必要とされるところである。少なくとも、日本的な流行の果ての「複雑系は終わった」のごとき不見識な言説がなされてはならない。

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